s_a_n_s_o’s diary

公立高校のブラックな環境に耐えられず退職しました。仕事や生き方についてあれこれ悩む過程を書き残します。

一人ハイク

一昨日、近くの山まで歩きに行った。以前から登山口の看板を目にしていたので、いつか登ってみたいと思っていた。

健康な体が欲しくて、何でもいいから体を丈夫にするためにできそうなことを手当たり次第に試しており、ウォーキングも時々している。時々ウォーキングするくらいで健康な体が手に入るという甘い考えが本気のウォーカーやハイカーからするとナメくさっているのかもしれないが。

とにかく、せっかく天気がいいので手持ちの服から精一杯アウトドアっぽいものを選んで着込み、バックパックに何冊か本を詰めて、いざ鏡を見てみるととても近所に歩きにいく人とは思えない重装備になっていて引いた。恥ずかしい。こういう時どういう格好がベストなのかもスーパーインドア派の私にはまったく分からず、結果的に訳の分からない格好(ニット帽までかぶってた)になってしまった。

ニット帽があまりにも山登り的な雰囲気を醸し出していたのでそれだけは脱いでバックパックに入れ、あとスマホも家に置いて出かけた。

スマホを持たない、というのは今日のチャレンジでもあった。ここ最近体重管理のために「あすけん」のアプリを使っていて、何か食べるごとに一々細かく記録するのと、家事や勉強の効率を見直すため「aTimelogger」でこれも一々作業開始と終了時間の入力をし続けていた。おかげで見て見ぬふりをしていた自分の摂取カロリーも分かった(突きつけられた)し、ときに自分が10分近く歯を磨いていることも分かったりと非常に役には立ったのだが、なにせ一日に入力する回数が半端ない。一日くらいスマホに管理されない時間を過ごしたくなって、思い切ってスマホを持たずに出かけることにしたのだ。なぜそれが人生初の一人ハイクのタイミングなのか、ひょっとしてめちゃくちゃ後悔するのでは、とちらっと思ったが、もう今日は何があろうと自力で解決するのだ!と腹を括って家を出た。


家を出るまでの話でこんなに書いてしまったが、結果的にスマホは全然なくてよかった。正直、へんなキノコとか綺麗な小川とか竹林の木漏れ日とかを目にするたびに、あースマホで写真撮りたいわー、とは思ったのだが、そこはむしろ目に焼き付けて、体で感じる方が大事だ!と急にナチュラリストになって楽しんだ。


ちなみに発見したキノコはこちら。

http://asahikawa-kinoko.sakura.ne.jp/photo_gallery/62benityawantake.htm

写真は前述の通り撮らなかったので、帰宅後に「キノコ 赤」で検索したらワンアップキノコなどに混じってやっと出てきた。シロキツネノサカズキモドキというメルヘンな名前らしいが、正直私はこの造形に恐怖すら覚えた。キノコ類の造形にはなにか私の中のゾワゾワ感を引き出すものがある。とか言いながら実は触ってみた。そっと指でこのお碗状の部分をつついてみると、一気に白い煙のような胞子が吹き出してきた(その時の私の飛び退きっぷりは人が見てたらかなり恥ずかしかったと思う)。「マスクをつけていなければ5分と持たない」というナウシカの言葉が頭をよぎった。けどなんともなかった。


その後、登山道を黙々と登って行ったのだが、登山道はおろか麓の集落ですら人の気配が一切なく、国道から山に向かって国道に戻るまで誰にも出会わなかった。集落の人に会ったらどう挨拶するかシミュレーションまでしていたのに無駄に終わった。


ちなみにこの山は山と言っても登り切るのに40分程度の小山なので私みたいななんちゃってハイカーにはぴったりだった。傾斜もひたすらなだらかで、鳥の声や風の音、小川のせせらぎ以外何も聞こえないという(途中何回か「ひょっとして異界…」という不安がよぎるほどの)静けさだった。ただこの登山道は事前に地図で見た限りでは、登ってもなにがあるわけでもなく行き止まりで、向こうの麓に降りられるとか展望台的なものもないようだった。道から外れたところに神社があるようだったが、私のようなものが、スマホも持たずに道から外れたが最後、人様(=捜索隊)のお世話になるのは目に見えているので神社にアプローチするのは諦めていた。


ただただ登り、ひたすら登り、少し開けたところに出たのでゴールかな?と思ったらその先にまだかすかに道らしいものが続いている。せっかくなら道の終わりまで行きたい。シダや背の高い枯れ草で少しずつ歩きにくくなる道をとにかく進む。このころには、山の食物連鎖の頂点にいる黒or茶色の獣と遭遇しかねないという不安が広がり始めていた。体が黄色くて赤いチョッキを着てハチミツをなめていてくれればいいけどそんなファンタジーな生き物ではないことは充分わかっている。どこで引き返そう…と考えていたそのとき、ついに道端にタメ糞とおぼしき塊と薬莢を見つけて帰路につくことにした(ややダッシュで)。途中何度振り返っただろうか。国道が見えた時の安堵感は忘れられない。


この山、人もいなくて落ち着くし、傾斜がとにかくなだらかそのもので1回登っただけで大好きになったのだが、山に慣れた人でも、たとえよく知る山でも危険な目にあうという話はしょっちゅう耳にする。特に今年は目撃例も多いらしい。もう一人ハイクはするまい。人様にも迷惑をかける。


二度と一人で行けないとしても、この日は山の神様が私を生きて帰してくれたことに感謝し、もう少しちゃんとした山の経験を積みたいと思った。スマホ断ちのお陰で自然を充分堪能できたが、次からは電源は切ってでも持って行った方がいいかもしれない。